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笑いと健康について

免疫力を高める 笑いの効果

思いっきり笑って気分爽快(そうかい)!そんな経験は誰にでもあるはず。笑いが体の免疫力を高めてさまざまな病気の予防や改善に役立つことも明らかになっています。私は笑いを介護や医療の現場に活用しようと、その取り組みと普及に力を注ぐ「日本クラウンドクター協会」会長として活動しております。

「笑いの効用 9ヶ条」

  1. 脳内ホルモン分泌で痛みなどを緩和
  2. 内臓の消化機能が向上
  3. 横隔膜や腹筋などを強め、便秘を予防
  4. 血液がサラサラして、生活習慣病を予防
  5. α(アルファ)波が増えて、全身が癒される
  6. 若返りホルモンの分泌を促進
  7. 頭がスッキリし、忍耐力とやる気がでる
  8. 血糖値が低下し、糖尿病にも効果がある
  9. 血のめぐりを良くするので、脳梗塞などのリスクも軽減される

医療現場で活躍する「笑いの療法士」を育成

「笑いには自然治癒力があります」。私は十年前から、患者の心のケアにつなげようと「笑い」を医療に取り入れています。1999年には、「日本笑い学会」(本部・大阪)の支部として「NPO法人博多笑い塾」を立ち上げ、一芸を持った仲間とともに小学校や老人ホームなどを訪れては、マジックや大道芸、腹話術の芸で、多くの人に笑いを提供してきました。「笑いは病気への免疫力も高めるんです」と話す伊藤さんは、もっと介護や医療の現場に笑いのパワーを生かしたいと、2005年「日本クラウンドクター協会」を創設。笑いがもたらす癒やし効果や医学的効用を学習し、医療介護や社会福祉に貢献する「笑いの療法(クラウンドクター)」の養成を開始しました。

唾液が証明する「笑い」の健康効果

では実際、笑いはどのような医学的効用があるのでしょうか。私は、唾液(だえき)の酸化還元電位を測ることで、その健康効果が証明できると考えています。酸化還元電位とは、健康のレベルを測る指標の一つ。健康な人の数値は50mv(ミリボルト)以下で、病気の人は150mv以上、その間は要注意ゾーンです。高齢者20人に、約60分間マジックを見てもらうなど笑いを“処方”したところ、平均90mvあった数値が、60mvに改善しました。マジックの感動と笑いで、心がリラックスし、体の痛みが和らいだ証拠です。このほか、血液循環が改善されたり、がん細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞が増えて免疫力が高まることも分かっています。笑いを提供することで、高血圧、糖尿病、うつ病などに対する投薬量が半減したこともあります。笑いは病気の予防や改善に役立つ“処方箋”といえそうです。

「笑い」を患者に届ける環境づくりが必要

日本ではまだほとんど知られていませんが、欧米ではすでに「クリニクラウン(臨床道化師)」が定着し、病院で回診や検査の前に笑いを提供するなど、医療の現場で活躍しています。オランダでは約8割の病院が実施しているそうです。「日本クラウンドクター協会は、子どもだけでなく、高齢者や長期入院の患者などもケアの対象とする『笑いの療法士』を育てて医療現場へ派遣し、治療のサポートをしていきたいと考えています。そのためにはまず、多くの医療機関に理解してもらい、笑いを患者に届ける環境づくりが必要です」。患者に笑顔が浮かべば、その姿を見守る家族も心が癒やされ、勇気づけられるもの。笑いの健康パワーに、今後ますます注目が集まりそうです。※クリニククラウン=クリニック(臨床)とクラウン(道化師)の造語。長期入院している子どもらに遊びや会話を通じて笑いを引き出し、治療の不安を取り除く手伝いをする。

医師が提唱する癒やしの処方せん

  1. 1日15分笑いましょう
  2. 自然に笑いが出るように、笑いの筋力トレーニングをしましょう(舌を5秒間思い切り突き出す運動を3回繰り返す/大きく息を吸い込み「ハハハハハー」と5回発声。同じように「ヒ」「フ」「ヘ」「ホ」と続ける)
  3. 人を笑わせましょう。相手の笑いで自分も癒やされ免疫力がアップします
  4. テレビやラジオなどで、笑いを勉強しましょう
  5. 旅行や入浴、カラオケなど楽しい時間を過ごしてリラックスしましょう

癒しと元気

医療の場に欠けているもの

私が医療の中で感じたことは、診療を受ける患者さんは病気を抱えて当然不安であるし、医者の言葉や振る舞いにものすごく神経を集中してあります。その中で私が率先して笑いを提供すると、患者さんに“この先生は本当は楽しい人だね”という印象を持ってもらえるようです。いろいろなことを掛け値なく話してもらえる信頼関係ができて、治療がやりやすくなると確信しております。以来、私は「マジックは診療の中でさまざまに適応できる」と考え、白衣のポケットの中にも小道具などを入れています。私は病院勤務時代、在宅診療である患者さんを担当しました。その患者さんは癌の末期で、モルヒネを処方しなければならない状態であったのですが、ご本人は打ちのめされて、家族の方も非常に暗い雰囲気でした。そこで私がマジックをやったら、ほっと、オアシスみたいに笑いが生まれた。結局患者さんは6ヵ月後に亡くなりましたが、家族の方からは『何年ぶりかで笑った主人の顔を見られほっとしました』と感謝されました。このような現場での経験が現在の私の活動基盤となっているのは言うまでもありません。

笑いを媒介にしたコミュニケーション

その反面私のパフォーマンスには当然誤解や反発があったことも事実です。「医療は権威を保たなければというイメージがいまだにあります。医師は診療をしっかりすればいい。マジックなんて馬鹿みたいなことをやってるんじゃないよ」と言われました。大学院時代の主任教授にも最初は、いい印象を持たれなかったのですけど、その教授の退官パーティのまえに電話が掛かってきて“伊藤君、私の退官式でマジックしてよ”と(笑)。やはり嬉しかったですね。数年前から、私は母校の福岡大学の医学部の非常勤講師として、医学概論の授業を一駒担当しているのですが、当然ながら、在宅ケアと笑いの重要性がテーマです。それまでは白い目で見る人もいましたが、やはり時代の流れで先生たちも変わったと思います。笑いの効果や、マジックもひとつのリハビリということで学生に全部やらせています。そして、君たちが医者になった時にきっと行き詰ることがある。いろんな知識や技術があっても患者さんとのコミュニケーションがいかに大事が気づくから、その時にこの授業を思い出してほしいと話しています。少なくとも、母校から笑いの効果をきちんと評価されたことが嬉しいですね。