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臍帯血についてさいたいけつ

臍帯血(さいたいけつ 英名:Umbilical cord blood)とは、胎児と母体を繋ぐ胎児側の組織であるへその緒(臍帯:さいたい)の中に含まれる胎児血。「臍(さい・へそのお)」は常用漢字ではないため、さい帯血とも表記される。1993年以降は白血病などの血液疾患患者への移植医療に広く用いられるようになっている。

白血病などの難治性血液疾患の根本的治療のひとつである造血幹細胞移植において、造血幹細胞の供給源として骨髄および幹細胞動員末梢血とともに利用される。臍帯血は、細胞提供者(ドナー)の負担がほとんどなく、HLA2座不一致[註 1]でも移植が可能なことなどから、造血幹細胞の有力な供給源と考えられている[4][5]。

問題点としては、臍帯血に含まれる造血幹細胞の数が骨髄や末梢血動員幹細胞に比べて数が少ないために、生着不全(造血幹細胞が定着しないこと)の確率が骨髄・末梢血動員幹細胞に比べて高いことや、造血の回復が遅いことがあげられる。含まれる造血幹細胞数の多寡が移植の成否を分ける重要な要素となるため、採取された臍帯血の全てが移植に利用できる訳ではないこと(採取された細胞数が少ない場合は移植には用いられない)、特に成人の患者への適応症例はまだ多くはなく、骨髄移植に比べ知見が少ないことなどもあげられる[4][5]。

が、造血幹細胞数の少ない臍帯血も、幹細胞を増殖させた上で移植したり、複数人の臍帯血を一緒に移植する「カクテル移植」が試みられるなど、問題を克服する努力も行われている[15][16]。

近年、造血幹細胞以外の体性幹細胞である間葉系幹細胞が臍帯血中から見出された。これまで間葉系幹細胞は骨髄中に存在することが報告されていたが、骨髄だけでなく臍帯血も間葉系幹細胞の供給源として、骨や軟骨の組織工学的修復あるいは再生医療への臨床応用へ適用できる可能性が示された。さらに、神経細胞や肝細胞、上皮細胞など、より広範な組織への多分化能を有する前駆細胞の存在も示唆されており、世界各国で熱心に研究が進められている